ErgodoxEZ 勝手に日本語マニュアル

ErgoDoxの本体と付属品が映っている写真。

ErgoDoxEZ は、オープンソースの自作キーボードプロジェクト ErgoDox を簡単に導入するために、あらかじめ組みあがった状態で販売しようというプロジェクトです。EZ は Easy ですね。EZ は INDIE GOGO のプロジェクトから始まり、現在は公式ページから購入することができます。

特徴

ErgoDoxEZ は完全左右分離型キーボードです(無線じゃないのが痛い)。 タイピングで縮こまりがちな型を広げ、手首の回転を軽減し、親指によって頻出するキーを打つことができるので、姿勢改善や疲労軽減、腱鞘炎の軽減などを期待することができます(たぶん)。

キーボードのキーレイアウトは自由にカスタマイズすることができます。 キーには、よくある基本的なキーのみならず、いくつかのキー入力を同時に発生させたり、通常入力と長押し入力とで、別の入力を発生させることができます。 あるいは、マウス入力を代替するようなキーもあります。

さらに、キーレイアウトにはレイヤーの概念があり、通常入力用のキーレイアウト、画像編集用のキーレイアウト、 ゲーミング用のキーレイアウトなど、状況に応じて使い分けることもできます。

購入

購入場所

以前は KickStarter のみで購入することができましたが、現在は公式に販売を請け負う国外企業が立ち上がっており、そこから購入して輸入することができます。 価格はカスタマイズ次第です。なお本体価格に加えて 2,000 円そこそこの輸入税がかかります。

キースイッチなどのカスタマイズバリエーションがありますから、中古を探すよりは公式から購入する方が良いような気もします。 ちょっと試してみたいくらいのレイヤーなら、中古でもよいと思います。持ち歩くのも大変ですし、職場と家庭用と 2 台持ちとかできますしね。

配送期間

私の場合は、購入が 12/8 の早朝、東京到着が 12/16 でした。8 日間で届いたことになります。早いですね。 なお、年末や 2 月、台湾、中国における旧正月の時期は、従業員も休むために配送が遅れますよということです。

チルトキット・パームレスト

チルトキットの必要性についてですが、個人的には必要です。人体構造上、手首は傾いているものなので、傾いている方が都合がよいです。

一方でフラットのキーボードに慣れてしまっていて、不要である、という人には定かではありません。 どうせ特殊なキーボードを購入するなら試した方がよい、というのが個人見解です。

パームラストについては、決して品質がよいとは言いませんが、傾けるなら必須です。 傾けないなら好みによりますが、手の小さい方は、あった方が良いように思います。

なおバックライトについては割愛。個人的には光るの煩わしいので嫌いです。

キーの設定

ORYX

キーの設定についてはウェブブラウザ上で実行できる GUI ツール ORYX が提供されています。 以前は GUI ツールもなく、コードベースで管理してファームウェアを更新するもうちょっと敷居の高い作業を求められていましたが、容易になりました。

なお英語ですが、イメージ付きで設定方法の動画が公開されています。

QMK Frimware

ORYX は QMK (Quantum Mechanical Keyboard) Firmware なるオープンソースファームウェアのファイルを生成します。 つまり、ベースにあるのは QMK です。

ErgoDox の場合、ORYX だけで十分に扱うことができますが、関連資料を探していると QMK に行き当たることがあったりします。 あるいはカスタマイズやキーに関する情報が必要なときに参照することがあります。

キーの種類

設定できるキーコードの一覧は公式から確認することができます。ここでは OLYX 上での表記と、特殊なキーのいくらかについて解説します。 また、キーボード本体のライトの設定に関する情報は私が必要としていないので割愛します。

Add modifiers オプション

Add modifiers
Ctrl + Shift, Ctrl + Alt など、設定した Modifier キーを合わせて入力します。
Ex. K キーに Modifier キーとして Left Shift を設定すると、入力は Shift + K になります。
Ex. K キーに Modifier キーとして Left ShiftLeft Ctrl を設定すると、入力は Ctrl + Shift + K になります。

Modifier は特殊なキー以外のさまざまなキーに設定することができます。

基本キー

Digits-
0-9 の基本的な数字の入力キーです。
ただし US キーボードと同様に、たとえば 7Shift すれば & になります。
Letters-
A-Z の基本的な文字の入力キーです。
Fn Keys-
Fn 1-24 の基本的なファンクションの入力キーです。
NumPad-
数値入力用キーボードの入力です。
0-9, +-=./*, Enter, NumLock があります。
Punctuation-
各種記号の入力キーです。
Shifted- は本来 Shift キーの入力が必要な記号を直接入力します。
Shifted- は高速に Shift を入力するため、リモートデスクトップなどで問題が起こる可能性があります。
Spacing-
Backspace, Tab, Enter, ESC, Space があります。
Navigational-
よくあるキーですが、Navigational- として区分されています。
Page Up, Down, End, Home
ページを移動します。
Left arrow, Right, Up, Down
方向キーです。
Insert, Delete, Scroll lock
文字どおりです。
Application
アプリケーションキー。
ふつうマウスの右ボタンをクリックと同様です(Win)。
SysRq
Print Screen を実行します。
Alt + SysRq を入力すると、Magic SysRq の入力になります(Linux)。

INT キー

INT-
International の略称で、国際規格のためのバッファのキーとなっているようです。
1-9 までがあります。
INT1
JIS キーにおける ``,_`` キーに相当するようです。
INT2
JIS キーにおける カナ/かな キーに相当するようです。
INT3
JIS キーにおける ¥, | キーに相当するようです。
INT4
JIS キーにおける 変換 キーに相当するようです。
INT5
JIS キーにおける 無変換 キーに相当するようです。
INT5
JIS キーにおける Numpad キーに相当するようです。

LANG キー

LANG-
1-9 までの言語切り替え用の入力キーです。
LANG3
JIS カタカナ
LANG4
JIS ひらがな
LANG5
JIS 全角/半角

Dual-function キー

Dual-function keys-
キーを押し続けると入力されるキーに加えて、タップすると入力される任意のキー (Command) を設定することができます。
Hyper
Alt + Shift + Ctrl + Cmd が入力されます。
Meh
Alt + Shift + Ctrl が入力されます。
SCMD
Shift + Win / Cmd が入力されます。
Left Shift, Alt, Ctrl, Cmd/Win
文字どおりです。
Right Shift, Alt, Ctrl, Cmd/Win
文字どおりです。
Ctrl Shift, Ctrl Alt
文字どおりです。左右分離の必要がなければこれを使うのがよさそう。

Firmware キー

Reset
キーボードの設定をリセットして新しいファームウェアをフラッシュします。文字どおりのリセットです。
物理的なスイッチでも Reset することができますが、押しにくいので設定が推奨されます。
EEPROM
キーボードのメモリをクリア(Wipe)します。
トラブルシューティング以外の目的で使わない方がよさそうです。
NKRO
N キーロールオーバーモードを切り替えます。
N キーロールオーバーは同時に入力できるキー数の設定のことです。必要がなければ使わないのがよさそう。

Layer キー

Layer switch-
レイヤーを切り替えるためのキーです。
TG
入力すると「次のレイヤー」に切り替えます。再入力すると「元のレイヤー」に切り替えます。
MO
キーを押し続けて入力している間だけ「指定した上位(右)のレイヤー」に切り替えます。
入力をやめると「元のレイヤー」に切り替えます。
OSL
入力すると、次のキーが 1 回入力されるまで「指定した上位(右)のレイヤー」に切り替えます。
1 回キーを入力すると「元のレイヤー」に切り替わります。
キーを押し続けて入力すると、レイヤーの変更が維持されるようになります。
レイヤーは 16 までのレイヤーに限定されます。
TO
「指定したあらゆるレイヤー」に直接切り替えます。
レイヤーは 16 までのレイヤーに限定されます。
TT
入力している間だけ「指定した上位(右)のレイヤー」に切り替えます。
入力をやめると「元のレイヤー」に切り替えます。
通常入力すると「指定した上位(右)のレイヤー」に切り替えます。
LT
キーを押し続けて入力すると「指定した上位(右)のレイヤー」に切り替えます。
通常入力すると、指定した任意のキーを入力します。
レイヤーは 16 までのレイヤーに限定されます。

Media キー

Media-
メディアプレイヤーや音量操作に関するキーです。
Mute, Volume Up, Volume Down
メディアの音量をミュートする、上げる、下げる。
Next, Prev
次のメディアに進める、前のメディアに戻る。
Play, Stop
メディアを再生、停止する。
Eject
メディアを取り出す?
Mail, Calc, File manager, Search
メーラー、計算機、ファイルマネージャー(エクスプローラー)、検索アプリを起動する。
WWW Home, WWW Back(Win), WWW Forward(Win)
ブラウザやエクスプローラ操作などで、ホームに移動する、戻る、進む。
Refresh
更新する。
Favorite
お気に入り登録する。
Fast Forward, Rewind
早送りする、戻す。

Modifiers キー

Left Shift, Ctrl Alt, Option(Mac), Command(Mac), Win(Win), Meta(Linux)
指定した Shift, Ctrl, Alt, Option, Command, Win, Meta のいずれか、またはすべてを入力します。
Right Shift, Ctrl Alt, Option(Mac), Command(Mac), Win(Win), Meta(Linux)
指定した Shift, Ctrl, Alt, Option, Command, Win, Meta のいずれか、またはすべてを入力します。
OSM
入力すると、次のキーが 1 回入力されるときに、指定した Modifier キー (Shift, Ctrl, Alt-) が入力されます。
1 回入力されると、Modifier キーの入力はなくなります。
キーを押し続けて入力すると、Modifier キーの入力が維持されるようになります。

Mouse control キー

Move up, down, left, right
マウスを上下左右に動かします。
Left Click, Right Click, Middle Click,
マウスクリックを入力します。
Button4, 5
マウスのボタン 4, 5 を入力します。
Wheel Up, Down, Left, Right
マウスホイールを上下左右に動かします。
Acceleration-
マウスの加速の程度の設定を 0, 1, 2 で切り替えます。

Other キー

Pause
ポーズキーです。
NONE
特に何も割り当てられないキーです。未設定と同様と思われます。
ORYX
Oryx Live Training とキーボードをペアリングします。
Power
電源ボタンです。
Undo, Cut, Copy, Paste,
Mac 用と Win/Linux 用 (Command or Ctrl +) があります。
Find
Find キーです。
Shift (
キーを押し続けて入力すると Shift が入力されます。
通常入力すると ( が入力されます。
Shift )
キーを押し続けて入力すると Shift が入力されます。
通常入力すると ) が入力されます。

System Control キー

Indicator brightness
LED インジゲータの明るさを切り替えます。
Power, Sleep, Wake
電源の管理です。
Brightness up, down
画面の輝度を上下します。

Macros キー

Macro 1 Rec, Macro 2 Rec
マクロの録画を開始します。
Macro 1 Play, Macro 2 Play
マクロを再生します。
Macro Stop Rec
マクロの録画を終了します。

ハードウェアのカスタマイズ

EZ はオープンソースの自作キーボードプロジェクト ErgoDox を簡単に導入するためのものですが、 ベースは ErgoDox なので、ハードウェアを改造することができます。 オープンソースのプロジェクトなので、互換用の部品が公開されていたり、販売されたりしています。 キースイッチが故障した倍などにも交換することができますね。こちらに関しては公式に書いてあるので割愛します。

有名どころだと、Falba Tech さんがケーブルや筐体などを販売しています。

キーキャップ

キーキャップについては、公式でも購入することができますし、互換品を購入することもできます。 ただし、キーのバックライトを付けている場合は、公式の製品以外に互換製品を探すのが困難かもしれません。

互換品は TALP KEYBOARD などで購入することができます。最近では amazon 何かでも見かけますね。

キースイッチ(軸)の種類次第で購入する製品が変わる可能性がありますが、 概ね CherryMX シリーズと互換がある、十字のキーキャプなら対応するでしょう。

色だけではなく、キーの高さがプロファイル(型の種類)によって異なったり、素材が異なったりするので、 この辺りをカスタマイズして楽しむのもよいと思います。 他に、キーボードファンの人たちが 3Dプリント用で出しているものなどもあるのですが、長くなるので割愛。

キースイッチ

公式から購入すると、一律のキースイッチを組み込んでくれますが、必要ならキースイッチを自分で交換したり、あるいは部分的に交換することなどができます。 これについては解説すると長くなるのと、私があまり必要としていないので割愛。市販のキーボードも部分的に荷重の程度が変わっていたりしますね。

TRRS ケーブル

分離型の自作キーボードの多くが TRRS なるケーブルを使って左右のハードウェアを接続しています。 ErgoDox EZ にはあらかじめついてきますが、このケーブルの長さや色などを変えたい場合は別途購入する必要があります。

TRRS ケーブルは通常のオーディオ用ステレオケーブルと異なり、端子に 3 つの枠、4 極分の信号を送受信するようになっている点に注意します。 これがなかなかマイナーなケーブルで売ってません。海外サイトから輸入するか、あるいはわずかに残る amazon や自作キーボードのパーツを取り扱うお店から購入するしかありません。

Kinesis と比較して

Kinesis と比較してキーが湾曲してレイアウトされていないため、キー入力のし易さでいば、Kineis の方が勝るように思います。一方で慣れの問題かもしれませんし、あるいはキーキャップのカスタマイズによってある程度改善されるかもしれません。

一方でキーレイアウトの自由度については ErgoDox が勝ります。ただし Kineis にもマクロ登録機能やキーリマップ機能はありますから、どの程度の自由度を求めているかによっては、Kinesis の方が都合がよいかもしれません。

完全分離が必要なら ErgoDox を選択する理由に至りますが、肩が狭まってしまったり、ある程度、親指で入力して腱鞘炎や疲労を解消したい、という理由であれば、Kinesis は十分に活躍してくれますよ。