Creative Commons ライセンスが抱える問題の話

先日、私がデザインしている「軽量マークアップ言語 KARAS」の宣伝のために オープンソースカンファレンス-OSC に出向きました。その会場で行われていた Creative Commons ライセンスの話が面白かったのでいくつか紹介したいと思います。

前方互換が抱える問題「未承諾のライセンス」

CC などのライセンスが前方互換を持つことにはいくつかの問題があるそうです。

例えば「GPL 2.0 以降のラインセンスと互換性がある」というライセンスが存在するとします。 これは現時点で存在していない「GPL X.0」というライセンスが未来に存在するとき、 そのライセンスとも互換性を持つ、ということになります。 そしてこのような文面であれば、それが直感的に理解できます。

前方互換が抱える問題を可視化

ところがこのようなラインセンスの形態は一部の国の法律などでは有効でない可能性があるそうです。 問題は「現時点では存在していないライセンスと互換性がある」という点です。 「権利保有者が内容を確認できないライセンスについても承諾させてしてしまう」 というライセンスは法的に有効であるのかどうか、という話だそうです。

確かに問題になりそうですね。前方互換に関する記述が法律的に有効であるか無効であるかを除いてもです。 互換性を持つとされる別のライセンス B が将来的に契約者に不利なものになるのだとすれば、 そのライセンス A を採用する人はいないでしょう。 ライセンス A が将来的にライセンス A+1 になるときも同じです。

異なるライセンス間の互換も同一ライセンス間の互換も、傍目には素晴らしく便利なものに見えますが、 そのようなライセンスを定めるのは非常に難しいことが分かりました。

CC コンテンツはテレビ配信・ストリーム配信できるか

CC ライセンスでは、そのライセンスに従う限りは対象のコンテンツを自由にシェアすることができます。 そしてシェアすることができる必要があります。ところがこのルールのために都合が悪くなる場面があるのです。

例えば日本の TV 放送には、DRM(ダビング10) が適用されていますね。 これは利用者の複製を制限する機能です。したがって(日本国の)TV で CC ライセンスのコンテンツを配信することは、 CC ライセンスに反してしまいます。

同じようにストリーミング配信される作品の中に CC ライセンスが適用される場合も問題になりますよね。 原則として保存はできないわけですし。(実際にはどうとでも保存することが出来るという無粋な突っ込み入りません。ダウンロードに関する著作権云々もなしで。)

ストリーム配信や制限配信で CC コンテンツはどうなる

配信したコンテンツの一部は CC ライセンスであり、次の URL などからダウンロードすることができる、 と何かしらの方法でクレジットすれば体裁は保てるような気がしますが、正確な対応・解決方法は分かりません。 そもそもそういうシーンでは使うことができないかもしれないですね。

これらの問題について、解決が必要ならその方法を公式に問い合わせてください。 このような件での問い合わせそのものはあるようです。 少なくとも私はお答えできかねます。そもそもライセンスに詳しい訳でもないですし。

複数の権利や権利者が混在する CC ライセンス

写真などに CC ライセンスが適用される場合に、その写真に写されている人物の肖像権は CC ライセンスでカバー(強制)できないそうです。 つまり CC で配布されている人物画像を利用していて、ある日その写真が肖像権の都合で文句を付けられても何の反論もできない、ということです。

肖像権は CC の範囲外である

また楽曲のように複数の権利者が存在するコンテンツに適用される CC ライセンスも問題を抱えているようです。 作曲者、作詞者、原版の権利者、演奏者などの複数の人物が権利を持つとき、CCライセンスがどのように扱われるべきなのか、という話です。 基本的な方針としては、楽曲の権利者すべてが同意した上で CC ライセンスを適用することを推奨していますが、 これをライセンスによって強制することはできないようです。

おわりに

細かなところまでライセンスを気にしなければいけないようになると、 開発や創造の速度はガクッと落ちますし、モチベーションも下がるしで嫌になりますね。 「ライセンスの氾濫」なんて問題もありますし、CC の中の人たちの働きが与える影響は非常に大きく、そして有意義なものだと思います。 ライセンスなんて(本来は)私の頭では追いつけない話なので、便利で扱いやすいライセンスが普及してくれることを期待するばかりです。